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2021年度:文学館企画展
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2021年度:文学館企画展
2021年8月6日 9時30分 公開 2022年3月16日 11時54分 更新
「上林暁とは…」~作家たちとの書簡交流から暁の人間像を見る
私小説作家上林暁とは、どのような人物であったろう。
これまでは、上林暁の文壇交流などを数多く取り上げ上林作品とその人となりも、各書誌にて事ある
ごとに批評批判を受けてきたが、今回は幾人かの作家が暁とやりとりした書簡から暁の人間像を見て
みたい。
初回は、國見純生の「上林暁からの葉書」『上林暁研究』園田学園女子大学(吉村研究室)から、
歌人である筆者との書簡交流から暁の人間像を見る。
『上林暁研究』は発刊から20年の歳月が経過しているが、新しい世代にも上林暁を知っていただく
には格好の文献であることからこの期にあらためて紹介させていただいた。
書面からその人の人間像を見ていくのは、読み手側の感情移入にも大きく依存されるので、必ずしも
それが真意とは限らないが、書簡交流を体験された作家たちの感想文から暁の真髄にも迫っていただ
きたい。
また、上林は近代文学期から現代文学期に及んで活躍をしてきて、この間に芸術院賞や読売文学賞など
を受賞している。これらの功績なども随時紹介し、上林文学の真価にも迫りたい。
上林暁は、病床生活を送りながら作家活動を続けたが、作品「悲観しない病者」(「随筆集幸徳秋水
の甥」所載)では、次のように述べている。
私は中風で、もう十一年寝ついている。六十歳になってから、一度も風呂に
入らないし、一度も歩いたことがない。利くのは左手だけで、右手や両足は
利かない。幸いに頭が呆けていないので、作家としての渡世ができている。
おかげて、生活がかつかつにできているほどの原稿料や印税がはいる。
おまけに芸術院会員としての年金があるので、生活の不安はない。(後略)